横濱開港百五十周年記念・會芳樓再現宴
2009年は、横濱港が開港してから150年の節目となる。
これを記念して、横浜各地で記念イベントが目白押し。
もちろん、横濱港と密接にかかわりのある横濱中華街でも、
いろいろな企画が実施されている。
馴染みの大珍樓では、横浜郷土史研究家から提供をうけた
横濱中華街最古の酒家(レストラン)【會芳樓】のメニューを
元に再現宴席を企画した(参考・画像の新聞記事)。
今回は、この企画宴の内容を一部変更した内容での宴会。
ちなみに、【會芳樓】は、現在の關帝廟通りにある山下町公園にあり、
食事をしながら観劇もできるかなり豪華な酒家だったようだ。
150年前、横濱の地に生きた日本人、西洋人、中国人たちは、
何を見て、何を思ったのだろう?
そんな想像をするだけで、なんだかワクワクしてきます。
【菜譜】
1.到奉糖果(蓮藕・椰子・蓮子・馬蹄)
砂糖漬けの果実。蓮藕(レンコン)・椰子(椰子の実)・蓮子(蓮の実)・馬蹄(クワイ)。
参加者が集まるまでの間、お茶とともにいただきます。
2.鷄同鴨講話
前菜。[豆支]油鷄と滷水鴨の併せ盛りです。前菜からして突き抜けた旨さです。
しかし、面白い料理名ですね。
3.紅燒干貝翅
干し貝柱入りのフカヒレスープ。
ありがちなフカヒレスープかと思ったら大間違い。濃厚な貝柱の旨み主体のスープ。
これもまた唸るような深い味わいがありました。
4.碧緑[火文]牛肉
牛肉と青色野菜の煮物。
これ、実に興味深い料理で、牛肉に初めて触れた横濱人が恐る恐る食べた料理という
感じがするんですよ。なんというか、ビーフシチューに通じるところがある。
ハイカラな明治時代の横濱の風景がみえてきそうな、そんな気分にさせられました。
会話が大変に盛り上がった一品でした。
5.生菜[奄鳥][春鳥]鬆
鶉のたたきレタス包み。本来、【會芳樓】のメニューには、「ハトのたたき」と
あるのですが、「ハトのたたきは、美味しくならない」ので、鶉に変更したのだ
そうです。
実に鶉らしい、鉄っぽい味がします。レタスとよく合い、巣晴らしい皿です。
6.干煎大蝦碌
大海老の鬼瓦焼き。ご覧のとおり、大きな海老。意外にも旨みもちゃんとあります。
なによりも楽しいのは、身そのものよりも、殻にいろいろな旨みが貼りついている
こと。みんな殻を口のなかで転がして楽しんでいました。
7.脆皮燒乳鴿
乳鴿に下味をつけて、煮えたぎる油を何度もかけて表面をパリパリにしたもの。
この企画のためにわざわざ鴿の名産地・中國中山縣から低温保存の鴿を入荷させたもの。
しかし、この鴿の旨さ!圧倒的です!
たとえば、福臨門魚翅海鮮酒家港島店や陸羽茶室といった名店にもまったく引けを
とらないものだといえば、「そんなに凄いのか?」と、解かっていただける方も
いらっしゃると思います。そのくらい凄いです。
8.花巻東坡肉
東坡肉を花巻に挟んだもの。今回の東坡肉は、酢を効かせた味わいとなっていて、
コースの中盤にあたらな展開を予感させる効果を発揮していました。
大変に美味しいです。
9.冬菇[火会]湯麪
しいたけそば。小さな碗での登場です。香り高いしいたけを使った淡い味付けのそばで、
なんだか懐かしい味がするなあと思ったら、横濱中華街關帝廟通りにあった名店・萬福の
スープと同じ香りがしました。
10.鮮蝦仁炒飯
今回は、チャーハンと言わずにヤキメシと呼びたい。そんな懐かしさこみ上げる
感動の味わい。なんだか子供の頃を思い出します。
11.鴛鴦煎薄餐
メニューには、白玉ロールとあります。順徳縣の郷土料理で、なかに入れるもの
によって、お惣菜にもお菓子にもなります。
12.生磨杏仁茶
杏仁の汁粉。店で丁寧にすり潰した杏仁の深い味わいに、心が落ち着きます。
【画像集】
【おわりに】
料理一つ一つの出来栄えだけでなく、組み合わせの素晴らしさに関心するばかり。
とりわけ、酸味を効かせた花巻東坡肉の登場は、それまでの流れの転調を宣言する
強烈なメッセージに、歓喜の声を上げたほどでした。
久しぶりに、大珍樓の力量を見せ付けられたという印象があります。
そして、150年前の横濱の息吹を感じ取った宴会になりました。